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関空浸水の台風襲来から5年
あの時の風速50m/sとはどれぐらい? 風の強さの目安とは

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2023/09/04 05:08 ウェザーニュース

2018年9月4日に徳島県南部に上陸、神戸市付近に再上陸した「平成30年台風21号」の襲来から5年が経過しました。

台風21号により近畿、四国を中心に記録的な暴風に見舞われ、最大瞬間風速は関西国際空港で58.1m/s、和歌山で57.4m/sなど全国100地点で従来の記録を上回りました。

強風にあおられたタンカーが、関西国際空港連絡橋に衝突したほか、暴風による飛来物や転倒により14人が死亡、約98,000棟の家屋が壊れるなど、近畿地方を中心に大きな被害をもたらしました。

天気予報などで台風の「風の強さ」を表わす際、「やや強い風」「強い風」「非常に強い風」「猛烈な風」という表現のほかに、「風速●m/s」という、速度に関する情報が伝えられています。

風の強さについてのそれぞれの表現と風速が実際にどのような状況を示すかなど、風の強さの目安について、気象庁の見解などからまとめてみました。

なお、気象予報では通常、風速は「m/s」(メートル毎秒)という国際単位で示されています。「平均風速」は10分間の平均、「瞬間風速」は3秒間の平均です。

風の吹き方には絶えず強弱の変動があり、瞬間風速は平均風速の1.5倍程度になることが多いのですが、大気の状態が不安定な時などには3倍以上に達する場合もあります。
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【猛烈な風】=屋外での行動が極めて危険、住家の倒壊なども発生

平均風速30m/s以上の風は「猛烈な風」と呼ばれ、最大瞬間風速は60m/sに達することもあります。2018年に関西国際空港で記録した最大瞬間風速もこのレベルの強さでした。

平均風速30m/s以上に達すると、樹木が倒れ始め、固定不十分な金属屋根の葺き材のめくれなどが生じます。さらに、平均風速が35m/s以上に達すると、走行中のトラックが横転するほどの強さになります。

平均風速が40m/sを超えると、樹木・電柱・街灯が倒れたり、ブロック壁が倒壊することも。木造住宅で倒壊するものがあったり、鉄骨構造物でも変形するものが生じたりもします。

もちろん、非常に強い風と同様に屋外での行動が極めて危険に。車の運転や外出などの屋外での行動は避けるようにしてください。

【非常に強い風】=何かにつかまっていないと立っていられない

平均風速20m/sから30m/s未満を「非常に強い風」と呼称します。時速に換算すると90km〜110kmで、高速道路の自動車や特急電車のスピードに匹敵します。最大瞬間風速は30~40m/s前後です。

人が何かにつかまっていないと立っていられない状態で、車を通常の速度で運転するのも難しくなります。また、ビニールハウスのフィルム(被膜材)の破損など生じます。

さらに、細い樹木の枝が折れたり、根を張っていない樹木が倒れ始めたりします。さらに、看板や屋根瓦・屋根葺(ふ)き材などが落下や飛散する場合もあるので、飛来物によって負傷する恐れがあります。屋外での行動は極めて危険です。

【強い風】=風に向かって歩けなくなり転倒する人も出る

「強い風」は、平均風速15m/s以上20m/s未満で、時速に換算すると70kmほど。最大瞬間風速は30m/s前後です。

人が風に向かって歩けなくなり、転倒する人も出る状態で、高所での作業は極めて危険になります。電線が鳴り、看板やトタン板などが外れ始めます。

また、建物の屋根瓦や屋根葺き材に、はがれるものも出てくるので、できるだけ外出は控えましょう。さらに、高速運転中には横風に流される感覚が大きくなるので、運転する場合も十分注意が必要です。

【やや強い風】=風に向かって歩きにくくなり傘がさせなくなる

「やや強い風」は、平均風速10m/s以上15m/s未満で、時速に換算すると50km程度です。最大瞬間風速は20m/s前後になります。

人が風に向かって歩きにくくなったり、傘がさせなくなったりする状態で、樹木全体や電線、建物の樋(とい)が揺れ始めます。

道路際に設置された吹き流しの角度が水平になり、走行中の車が高速運転をしている際には横風に流される感覚を受けます。

暴風警報の基準はどれくらい?

気象庁では風の強さを「やや強い風」「強い風」「非常に強い風」「猛烈な風」の4段階に分類している一方で、暴風警報基準以上の風のことを「暴風」と呼んでいます。

暴風警報は「暴風により重大な災害が発生するおそれがあると予想したとき」に気象庁が発するもので、基準は「平均風速がおおむね20m/sを超える場合」とされ、地方によって異なります。

たとえば、北海道でも稚内市など宗谷地方北部では平均風速が陸上で20m/s・宗谷海峡で25m/s、札幌市など石狩地方中部では18m/s。東京都でも23区は25m/s、八丈島など伊豆諸島南部では30m/s。沖縄県では25m/sなどと、現地の気象条件によって細かく定められています。

台風などによる暴風が予想される場合、気象庁は数日~1日前に「暴風に関する気象情報」を発表し、災害の恐れのある強風(東京都23区では13m/s以上)となる6~3時間前には「強風注意報」が発表されます。さらに重大な災害の恐れがある暴風となる6~3時間前に、暴風警報が発表されることになります。

なお気象庁では、強風は「風の強い状態の総称」で、突風は「急に吹く強い風で継続時間の短いもの」と定義しています。

また、竜巻は「積雲や積乱雲に伴って発生する鉛直軸(地面に対して垂直な方向)を持つ激しい渦巻で、漏斗(ろうと)状または柱状の雲を伴うことがある。地上では、収束性で回転性の突風や気圧の急下降が観測され、被害域は帯状・線状となることが多い」とされています。

風が強くなる前に対策を

大雨などの場合も同様ですが、気象庁は「強風注意報や暴風警報が発表された時点で、風が強くないとしても決して油断しないでください」と呼びかけています。

暴風に関する気象情報が発表されたら、風が強くなる前に対策を行っておく必要があります。

物干し竿や植木鉢、自転車など家の周囲やベランダに置いてある倒れやすいものは、固定するか家の中に入れること。屋根や雨戸、シャッターを点検し補強しておくこと。窓ガラスに飛散防止用のフィルムを貼っておくことなど、強風・暴風への対策を施しておきましょう。

平成30年台風第21号から5年目を迎えた今年もすでに、台風などによる被害が日本列島各地で発生しています。

気象情報などで強風が予想される場合には、外出など屋外での行動は控えるとともに、車の運転もできるだけ避けるようにしてください。

屋内でも窓や雨戸、シャッターをしっかり閉めること、割れた窓ガラスの飛散防止のためカーテンを閉めることなどの対策を心がけましょう。

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参考資料など

気象庁「風の強さと吹き方」(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/kazehyo.html)